取引の世界では、メイカー注文とテイカー注文という概念が重要な役割を果たし、参加者の市場への関わり方を方向づけます。この2つの用語は、取引の約定に対する異なるアプローチを表し、取引手数料や市場動向に影響を与えます。
テイカー注文:即時性を優先
テイカー注文は緊急性と即時性のある注文です。トレーダーが現在の市場価格で即時に約定したい場合、テイカー注文を行うことになります。すでに注文板に並んでいる注文を約定するため、市場から流動性を「テイクする(奪う)」ことになります。テイカー注文は、素早いポジション参入や決済が可能であり、スピードを優先する場合、魅力的な注文方法です。
即時に約定されることから、その利便性を考慮し、テイカー注文の取引手数料(テイカー手数料)は、メイカー注文に比べて若干高くなる場合があります。
メイカー注文:流動性を提供
メイカー注文は、マーケットメイカーの役割を担うともいえ、市場に流動性と安定性をもたらします。トレーダーがメイカー注文を出すと、その注文は注文板に追加され流動性を提供します。注文は他のトレーダーのテイカー注文に約定されるまで注文板に残ります。メイカー注文は、買い注文と売り注文の価格差を縮小し、ビッド・アスク・スプレッドに影響を与えることがあります。
流動性を提供する見返りとして、メイカー注文を出すトレーダーは通常、テイカー注文より低い取引手数料(メイカー手数料)を享受できます。メイカー注文は、自分の注文がテイカーにより約定されるのを待つという取引に対する忍耐強いアプローチを特徴とします。
以下の表は2種類の注文の違いを示しています。
|
メイカー注文 |
テイカー注文 |
定義 |
約定されるまで注文板に並び、流動性を提供する注文 |
注文板から流動性を奪い、すぐに約定する注文 |
*取引手数料 |
0.02% |
0.055% |
発注タイプ |
指値注文のみ |
成行注文または指値注文 |
*記載の取引手数料は、無期限取引および先物取引に関するものです。Bybitの全取引商品に適用される手数料体系の包括的な概要については、こちらをご参照ください。
取引に対する影響
BTCUSDTの無期限契約を例に比べてみましょう。
通貨ペア |
BTCUSDT |
契約サイズ |
2 BTC |
売り買いの方向 |
買い/ロング |
参入価格 |
60,000 USDT |
決済価格 |
61,000 USDT |
田中さん:2方向のメイカー注文でポジションを開いて閉じた場合
建玉手数料 |
2 × 60,000 × 0.01% = 12 USDT |
決済手数料 |
2 × 61,000 × 0.01% = 12.2 USDT |
ポジション損益 (手数料を除く) |
2 × (61,000 - 60,000) = 2,000 USDT |
決済損益 |
2000 - 12 - 12.2 = 1,975.8 USDT |
佐藤さん:2方向のテイカー注文でポジションを開いて閉じた場合
建玉手数料 |
2 × 60,000 × 0.06% = 72 USDT |
決済手数料 |
2 × 61,000 × 0.06% = 73.2 USDT |
ポジション損益 (手数料を除く) |
2 × (61,000 - 60,000) = 2,000 USDT |
決済損益 |
2000 - 72 - 73.2 = 1,854.80 USDT |
上記の例から、田中さんは佐藤さんに比べ取引手数料が低く、より好ましい決済損益を得たことが分かります。
この例は、取引を行う前に取引手数料を理解することの重要性を示しています。手数料を理解することにより、トレーダーはコストを考慮したうえで十分な情報に基づいた意思決定を行い、取引戦略と結果を最適化することができます。
メイカー注文を約定するには、以下のことを実施します。
- 発注ゾーン内で指値注文を利用する。
- ポストオンリーを選択する。
- 現在の利用可能最適価格より有利な価格を目指し、戦略的に指値注文の価格を設定する。
買い/ロング注文の場合:最適な買値よりも低い価格を設定。
売り/ショート注文の場合:最適な売値よりも高い価格を設定。
指値注文がすぐに約定した場合、注文はテイカー注文扱いとなり、ポストオンリーを選択していることから速やかにキャンセルされますのでご注意ください。指値注文が意図せず即座に約定する理由について詳しくはこちらをクリックしてください。
注:
- 決済損益には、手数料を差し引いたお客様の最終的なポジション損益額が表示されます。
- Bybitはプラットフォーム上の全通貨ペアで、同じメイカー・テイカー手数料体系を採用しています。