オプション取引には、大きく分けてスペキュレーター(投機家)とマーケットメイカーの2つのタイプの投資家が存在します。スペキュレーターとマーケットメイカーはそれぞれ異なる方法で取引を行い、利益を得ています。
スペキュレーター:スペキュレーターとは、単一のオプションを売買したり、複数のオプションで取引戦略を立てたりする投資家のことです。原資産価格やオプションの推定変動率(IV)の増減など、将来の一定期間における原資産価格の値動きを的確に予測することで利益を得ます。
マーケットメイカー:マーケットメイカーとは、契約上の合意に基づいて市場に流動性を提供する(つまり、ビッドとアスクの両方を提供する)大手の機関投資家のことです。オプション取引の買いと売りを同時に行うことで市場に流動性を提供します。
一般的に原資産のオプション取引には複数の満期日があるため、トレーダーは満期日ごとに複数の権利行使価格のオプションを保有することになります。それぞれの権利行使価格はコールオプションおよびプットオプションであらかじめ決定されています。そのため、マーケットメイカーは同時に多くのオプションを提示する必要があります。これにより、市場に流動性も提供されます。このような市場の操作には、強いリスク許容度と多額の資金が必要となる場合が多いため、マーケットメイカーは大手の機関投資家が役割を担う傾向にあります。
マーケットメーカーはスペキュレーターとは異なり、オプションのビッドとアスクのスプレッドから利益を得ます。中間価格とビッド/アスク価格の差は、マーケットメイカーが市場に流動性サービスを提供することによって得られる報酬とも見なすことができます。
上記のような違いから、スペキュレーターとマーケットメイカーは市場価格に対する見方も異なっています。スペキュレーターは一回の取引でより大きな利益を求める傾向があり、マーケットメイカーはビッド・アスク・スプレッドからいかに利益を得るか(つまり大量の取引でビッド・アスク価格のわずかな差からいかに利益を得るか)に関心を持っています。
特にオプション市場においては、マーケットメイカーは複雑で大きなポジションを管理するケースが多く、このこともマーケットメイカーがスペキュレーターよりも価格に対して強い関心を持つ理由となっています。
オプション価格決定
実際の市場では、さまざまなタイプの投資家が常に一つの役割を担っているわけではありません。マーケットメイカーは価格提示を行う際、原資産価格や市場のボラティリティだけでなく、自身の保有するポジションや市場動向に対する評価も考慮します。強気相場と弱気相場では、マーケットメーカーは買い注文と売り注文を同時に出す必要があるため、現在の市場トレンドに逆行するポジションも受動的に保有することになります。例えば、強気市場ではマーケットメイカーの提示価格が大きく変動し、その結果コールオプションのアスク価格が高くなり、プットオプションのビッド価格が低くなる場合があります。
このように、スペキュレーターとマーケットメイカーの間には一定の競争関係があります。最終的にオプション価格は、さまざまな市場参加者によるさまざまな要因の相互作用によって形成されます。
ヒント
オプション取引に関する詳細、およびオプション取引のタイミングをより正確に判断する方法についてには、IV(推定変動率)の解説 およびUSDCオプション をご参照ください。