強制決済とはマーク価格が強制決済価格に達し、ポジションが破産価格(証拠金が0%)で決済されることを意味します。また、ポジションマージン残高が、必要な維持証拠金率を下回ることを意味します。
例えば、強制決済価格が15,000 USDTで、現在のマーク価格が20,000 USDTであったとします。マーク価格が15,000 USDTまで下落した場合、マーク価格が強制決済価格に到達し、ポジションの未実現損失が維持証拠金率に達したことを意味します。ここで、強制決済が行われます。
マーク価格の確認方法の詳細は、こちらをご覧ください。
強制決済価格の計算
(A)分離マージンモード
分離マージンモードは、トレーダーのアカウント残高から分離されたポジションに割り当てた証拠金を表します。このモードでは、トレーダーが強制決済によって失う最大金額は、そのオープンポジションに割り当てたポジションマージンに限定されるため、それに応じてリスクを管理することができます。
計算式
買い/ロングの場合:
強制決済価格(LP)= 参入価格 - [(必要証拠金 - 維持証拠金) / 約定数量] - (追加証拠金 / 約定数量)
売り/ショートの場合:
強制決済価格(LP)= 参入価格 + [(必要証拠金 - 維持証拠金) / 約定数量] + (追加証拠金 / 約定数量)
注:
- ポジション価額 = 約定数量 × 参入価格
- 必要証拠金(IM) = ポジション価額 / レバレッジ
- 維持証拠金 (MM) = (ポジション価額 x MMR) - 維持証拠金控除額
- 維持証拠金率(MMR)はリスク制限レベルに基づいています。詳細については、維持証拠金(USDT無期限契約)をご参照ください。
例1(ロング):
トレーダーAはレバレッジ50倍で20,000USDTで1BTCのロングエントリーを行いました。維持証拠金率(MMR)が0.5%で、追加証拠金はないと仮定します:
必要証拠金 = 1 × 20,000 USDT / 50 = 400 USDT
維持証拠金 = 1 × 20,000 × 0.5% - 0 = 100 USDT
LP = 20,000 USDT - (400 - 100) = 19,700 USDT
例2(ショート):
トレーダーBは当初、レバレッジ50倍、20,000 USDTで1 BTCのショートポジションを建てました。その後、手動で3,000 USDTを追加して、ポジションマージンを増やしました。証拠金を追加した後の新しい強制決済価格は、以下のように計算されます。
必要証拠金 = 1 × 20,000 USDT / 50 = 400 USDT
MMR = 0.5
維持証拠金 = 1 × 20,000 × 0.5% - 0 = 100 USDT
LP = 20,000 USDT + [(400 - 100)] + (3000/1) = 23,300 USDT
例3(ロング、ポジションマージンから資金調達料を差し引いた場合)
あるトレーダーは、レバレッジ50倍、20,000 USDTで1 BTCのロングポジションを建てました。当初の強制決済価格は19,700 USDTです(上記の例1を確認)。しかし、このトレーダーには200 USDTの資金調達手数料が発生し、資金調達手数料を支払うための利用可能残高が不足しています。
トレーダーが資金調達手数料を支払うために利用可能残高が不足している場合は、資金調達手数料がポジションマージンから差し引かれます。したがって、ポジションマージンの減少は、その後、強制決算価格をマーク価格に近づけることになり、ポジションが強制決済されやすくなります。
この場合、ポジションマージンの減少による新たな強制決済価格は、以下のように計算されます。
必要証拠金 = 1 × 20,000 USDT / 50 = 400 USDT
MMR = 0.5
維持証拠金 = 1 × 20,000 × 0.5% - 0 = 100 USDT
LP = 20,000 - [(400 - 100)] - (- 200/1) = 19,900 USDT
(B)クロスマージンモード
分離マージンモードと比べて、クロスマージンモードの強制決済価格は、他の通貨ペアの影響を受けるため、利用可能残高は常に変化し続ける可能性があります。クロスマージンモードでは、各ポジションに使用する必要証拠金はアカウント残高から分離されますが、残りの残高は共有されます。利用可能残高は、すべての既存ポジションで発生した未実現損益による影響を受けます。強制決済価格は、利用可能残高がなく、ポジションを維持するのに十分な維持証拠金がない場合にのみ行われます。
説明1(手数料は考慮しない)
クロスマージンで、トレーダーAがレバレッジ100倍、10,000 USDTで2 BTCのロングポジションを建てたいと仮定します。 現在の利用可能残高は2,000 USDTです。
維持証拠金 = 維持証拠金率 x 注文価額
= 2 × 10,000 × 0.5% = 100 USDT
維持証拠金(強制決済)価格を計算するために、現在の損失許容額を判断する必要があります。
損失許容額の合計 = 利用可能残高 - 維持証拠金
= 2,000 - 100
= 1,900 USDT
1,900 USDTの場合、このポジションは950 USDT(1,900 ÷ 2)の価格損失に耐えることができます。したがって、このポジションの強制決済価格は9,050 USDT(10,000 - 950)となります。
トレーダーAはこのリスクレベルを受け入れて、ポジションを建てます。必要証拠金200 USDTには、ポジションを建てるために利用可能残高が充てられます。
必要証拠金 = 約定数量 x 参入価格 ÷ レバレッジ
= (2 × 10,000) ÷ 100 = 200 USDT
利用可能残高 = 1,800 USDT
説明2
しばらくして価格が10,500 USDTに上昇し、トレーダーAのポジションは1,000 USDT(500 × 2)の未実現利益となります。
損失許容額の合計 = 利用可能残高 + 必要証拠金 - 維持証拠金 + 未実現利益
= 1,800 + 200 - 100 + 1,000
= 2,900 USDT
2,900 USDTの場合、このポジションは1,450 USDT(2,900 ÷ 2)の価格損失に耐えることができます。このポジションの強制決済価格は9,050 USDT(10,500 - 1,450)となります。
上記のロジックを用いると、強制決済価格の計算式は以下のように導かれます。
計算式
未実現利益のあるポジション
LP(ロング)= [参入価格 - (利用可能残高 + 必要証拠金 - 維持証拠金)] ÷ 純ポジション価額
LP(ショート)= [参入価格 + (利用可能残高 + 必要証拠金 - 維持証拠金)] ÷ 純ポジション価額
未実現損失のあるポジション
LP(ロング)= [現在のマーク価格 - (利用可能残高 + 必要証拠金 - 維持証拠金)] ÷ 純ポジション価額
LP(ショート)= [現在のマーク価格 + (利用可能残高 + 必要証拠金 - 維持証拠金)] ÷ 純ポジション価額
注:ポジションを決済するための手数料がかかるため、実際の強制決済価格と若干の差が生じる場合があります。
以下は、クロスマージンモード(手数料を考慮しない)での強制決済価格の計算例です。
例1(完全ヘッジ)
完全ヘッジは、クロスマージンモードで、同じシンボルで同じ契約数量でのみ成立します。例えば、トレーダーがクロスマージンモードで1 BTCのBTCUSDTロングポジションと1 BTCのBTCUSDTショートポジションを保有しているとします。
完全ヘッジされたポジションは、一方のポジションの未実現利益が他方のポジションの未実現損失を補うために使われるため、強制決済されることはありません。
例2(部分ヘッジポジション)
トレーダーBが以下のようにレバレッジ100倍で2つのポジションを保有し、現在の利用可能残高が3,000 USDTであると仮定します。現在のマーク価格は9,500 USDTです。
ロングポジション |
ショートポジション |
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ロングポジションの約定数量はショートポジションの約定数量よりも大きいため、ショートポジションが強制決済されることはありません。価格が上昇すると、常にロングポジションの未実現利益がショートポジションの未実現損失を上回ります。
ロングポジションの場合、強制決済価格を計算する際には、ポジションの純エクスポージャーである abs(ロング - ショート) = abs(2 BTC - 1 BTC) = 1 BTCを考慮する必要があるのみです。
必要証拠金 = (1 × 10,000 ) ÷ 100 = 100 USDT
維持証拠金 = 1 × 10,000 × 0.5% = 50 USDT
利用可能残高 = 3,000 USDT
LP(ロング)= [9,500 - (3,000 + 100 - 50)] ÷ 1 = 6,450 USDT
注:クロスマージンモードでは、未実現損失により利用可能残高が減少します。Bybitでは、ヘッジされていないポジションの新規注文、出金、未実現損失の補償のための未実現利益には対応していないため、未実現利益は利用可能残高に影響を与えません。
例3(様々なシンボルのポジション)
トレーダーCは現在、以下の2つのポジションを保有しており、現在の利用可能残高は2,500 USDTです。
ロングポジション |
ショートポジション |
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BTCUSDTポジションの場合:
LP = 19,500 - (2,500+200-100) ÷ 1 = 16,900 USDT
ETHUSDTポジションの場合:
LP = 2,000 + (2,500 + 400 - 100) ÷ 10 = 2,280 USDT
トレーダーCがBITUSDTのショートポジションをもう1つ建てたと仮定します。ポジションの詳細は以下の通りです。
ロングポジション |
ショートポジション |
ショートポジション(変更なし) |
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新規利用可能残高 = 2,500 - 500 (BTCUSDTロングポジションからの追加未実現損失) - 240 USDT (BITUSDTの必要証拠金) = 1,700 USDT
各ポジションの新しい強制決済価格は、次のように計算されます。
BTCUSDTポジションの場合:
LP = 19,000 - (1,700 + 200 - 100) ÷ 1 = 17,200 USDT
BITUSDTポジションの場合:
LP = 0.6 + (1,700+240-60) ÷ 10,000 = 0.788 USDT
ETHUSDTポジションの場合:
LP = 2,000 + (1,700 + 4,00 - 100) ÷ 10 = 2,200 USDT
上記の例から、クロスマージンモードで複数のポジションが同一資産(USDT)を証拠金としている場合、損失を出しているポジションの未実現損失が増えるたびに、収益を上げているポジションの強制決済価格がマーク価格に近づいていくことが分かります。これは損失を出しているポジションの未実現損失を補うために使用された後、共有された利用可能残高が減少するために起こります。未実現利益は、例2で述べたように利用可能残高を増加させることはありません。
利用可能残高が0になると、今ポジションを支えているのは、ポジション間で共有されないポジションの必要証拠金であるため、両ポジションの強制決済価格はそれ以上変化しません。
ただし、ポジションの必要証拠金に資金調達手数料の差引がある場合のみ例外とします。これは、利用可能残高が0の場合にのみ発生し、それ以上資金調達手数料が差し引かれれば、ポジションの必要証拠金が減少することになります。この場合、ポジションの強制決済価格は再計算され、マーク価格に近づくことになります。