Bybitのコピートレードメカニズムは、マスタートレーダーが注文した後にその注文パラメータを注文ごとにフォロワーのアカウントにコピーする機能です。その際、複数の注文が同じ方向、同じ通貨ペアの場合、それらの注文は1つのポジションに統合されます。決済は常に、統合された注文から算出された平均参入価格に基づいて実行されます。
各注文の執行はその時点の市況に左右されるため、あらゆる取引は固有のものとなります。したがって、それらの取引が同じ方向・同じ通貨ペアの他の取引と合わさった場合に不一致が生じ、それが平均価格および最終的な決済に著しく影響することがあります。トレーダーには、コピートレードを行う前に、すべての投資には固有のリスクが伴うことを理解し、受け入れる責任があります。
この記事では、フォロワーとマスタートレーダー間のポジションの不一致が発生する各種シナリオを取り上げます。
コピートレードの未執行
コピートレードの執行失敗の詳細について検討する前に、フォロワーとマスタートレーダーの平均参入価格の変化を示す表を見てみましょう。
マスタートレーダー |
フォロワー | ||||||
注文執行時 |
注文数量 |
注文価格 |
平均参入価格 |
注文数量 |
注文ステータス |
注文価格 |
平均参入価格 |
タイムA |
1 |
30,000 |
30,000 |
0.5 |
コピー済み |
30,000 |
30,000 |
タイムB |
3 |
20,000 |
22,500 |
- |
コピートレード未執行 |
- |
30,000 |
タイムC |
2 |
30,000 |
13,750 |
- |
コピートレード未執行 |
- |
30,000 |
タイムD |
1 |
10,000 |
13,214.28 |
1 |
コピー済み |
10,000 |
16,666.67 |
上記の結果から、コピートレードの未執行からどのようにフォロワーとマスタートレーダーの平均参入価格の不一致が生じるかがわかります。下記は、コピートレード未執行のよくある理由の一部です。
利用可能残高の不足 |
フォロワーのコピートレード利用可能残高が最低注文サイズを満たす注文を出すのに十分でない場合、発注は行われず、取引はコピーされません。 |
算出された注文コストが利用可能残高を超過 |
前のシナリオと同様、注文に必要な注文コストがマスタートレーダーに投資されたフォロワーの利用可能残高を超える場合、注文は成立しません。市場価格は急速に変動するものであり、注文が満たされる正確な価格に関する保証はありません。算出された注文コストが利用可能残高を超えた場合、システムは、フォロワーのアカウントが安全かつ管理可能な残高内にとどまるよう自動的に注文を却下します。 |
価格の乖離(スリッページ)がしきい値を超過 |
Bybitのコピートレードは、フォロワーの発注時のスリッページリスクを軽減する価格保護メカニズムを特長としています。システムは、1注文につきデフォルトで0.1%の最大スリッページ許容幅を導入していますが、トレーダー自身で最大5%まで調整することができます。
このプロセスを説明するために、異なるタイミングであるA、B、Cの取引執行について見ていきます。
|
最大ポジション証拠金制限が上限に到達 |
最大ポジション証拠金制限は、フォロワーのリスクとエクスポージャーを効果的に管理するためにフォロワーが設定することができるパラメータです。それは、フォロワーが各通貨ペアについて保有することができるポジション価額に関してあらかじめ定められた制限です。デフォルトでは、各契約タイプの最大ポジション証拠金上限は300,000USDTです。 フォロワーのポジションが特定通貨ペアの最大ポジション証拠金価額の上限に達した場合、追加の注文を出すことはできず、執行される全体取引件数とポジション平均参入価格がマスタートレーダーのものと乖離することになります。 ただし、フォロワーはその取引設定を、その優先順位やリスク許容度に応じて柔軟にカスタマイズすることができます。最大ポジション証拠金をより低い値、例えば、20USDTに調整することによって、最大ポジション価額は著しく減少し、上限により達しやすくなります。このような条件下では、最大ポジション価額に関する制限のためにフォロワーはコピートレードに失敗することがあります。
|
コピーガード機能 |
コピーガード機能は、システムによってフォロワーの約定価格がマスタートレーダーの約定価格より不利だと判断された場合に、フォロワーを取引の実行から保護するように設計された高度な機能です。フォロワーの約定価格がマスタートレーダーの約定価格よりも不利と判断された場合、取引はコピーされません。
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400以上のエントリー注文を保有 |
Bybitのコピートレーディングの仕組みは、注文ごとの緻密なロジックで運用されており、正確性と信頼性を確保しています。しかし、短時間に大量の参入注文が連続して執行されると、資金が大幅に浪費される可能性があります。このようなシナリオでは、限られた時間枠の中で投資家の資金が大きなリスクにさらされ、マスタートレーダーとフォロワーのポジションに大きな乖離が生じる可能性があります。このような場合、システムは、フォロワーのアカウントがマスタートレーダーの注文をコピーすることを一時的に停止します。 |
市況、ボラティリティ、流動性
コピートレードでは、市況や流動性の影響を受け、約定価格がわずかに異なり、そのために全体のポジション構成が異なるものとなることがあります。
フォロワーのコピートレードアカウントにおける取引は成行注文を用いて実行され、スリッページの影響を受けることがあります。最終的な約定価格は、市場での取引高や市況の影響で、マスタートレーダーの約定価格とは異なる可能性があります。
スマートコピーモードの制限
コピートレードのスマートコピーモードにはその性質上、特定の制限があります。2つの重要な制限は、注文証拠金の不足と、新規資金を追加することができないことです。そのため、フォロワーのポジションの不一致が生じたりリスクが上昇することがあり得ます。
注文証拠金の不足 |
コピートレードで出される注文にはすべて、最低注文サイズ(例:BTCUSDTでは最低数量が0.001BTC)があります。スマートコピーモードでは、BTCUSDTを例にとると、フォロワーの注文証拠金(マスタートレーダーの𝑘比率に基づいて算出)が最低注文サイズを満たす注文を出すのに十分でない場合、システムは、註文コピー失敗を最小化するために、注文を却下する代わりに0.001BTCで発注します。そのため、フォロワーはマスタートレーダーよりも利用可能残高に対してより高い比率を利用することになり、結果としてマスタートレーダーのポジションから乖離することになります。 |
新規資金の追加 |
スマートコピーモードを選択すると、フォロワーのレバレッジおよび取引数量が利用可能残高に占める比率はマスタートレーダーのそれを模倣します。システムがそれをどのように算出するかを説明するため、以下の例を示します。 例 𝓍 = フォロワーの利用可能残高(AB) 𝑘 = マスタートレーダーの注文コスト ÷ (マスタートレーダーの注文証拠金 + 利用可能残高) フォロワーの推定注文証拠金:𝑘 * 𝓍 通常の状況では、フォロワーの資金利用はマスタートレーダーのそれと同じ比率になります。ただし、資金のほぼ100%がポジション証拠金として利用されている場合、マスタートレーダーは新規資金を柔軟かつその裁量でそのアカウントに注入することができます。このアプローチは、特にレバレッジを最大限利用している場合、あるいは将来追加の参入注文を行う場合、アカウント全体のリスク削減に寄与します。 しかし、フォロワーはそれらの措置をコピーすることができず、ポジションの不一致が生じたり、リスクが上昇することがあります。 |
上級コピーモードの制限
上級コピーモードは、全体のポジションよりも個々の注文の執行タイミングを優先するフォロワーにより適しています。このモードにおける1つの制限は、すべての注文はフォロワーが選択した、取引を実行するのに必要な証拠金を推定するのに用いられる固定注文コストに基づいて出されることです。しかし、マスタートレーダーが各注文の数量が異なる契約を執行した場合、最終的に算出されるポジション価額がマスタートレーダーのものと乖離することがあり得ます。
例えば、マスタートレーダーがレバレッジ10倍の分離マージンモードでロングポジションを建てるシナリオを見てみます。フォロワーは、上級コピーモードを使用して1注文につき100 USDTの固定証拠金を設定します。この場合、固定注文コストが注文を執行するのに用いられ、最終的に算出されるポジション価額がマスタートレーダーのものと一致しない可能性があります。
マスタートレーダー |
フォロワー | |||||
注文執行時 |
注文数量 |
注文価格 |
平均参入価格 |
注文数量 |
注文価格 |
平均参入価格 |
タイムA |
1 |
10,000 |
10,000 |
0.0988 |
10,000 |
10,000 |
タイムB |
3 |
20,000 |
17,500 |
0.0494 |
20,000 |
13,333.333 |
タイムC |
2 |
10,000 |
15,000 |
0.0988 |
10,000 |
12,000 |
計算式
注文数量 (ロング) = 注文証拠金 × レバレッジ ÷ [注文価格 × (0.0012 × レバレッジ + 0.9994)]
平均参入価格 = 総契約価額 ÷ 総注文数量
総契約価額 = [(数量1 × 価格1) + (数量2 × 価格2) + (数量3 × 価格3)....]
取引ボット
コピートレードでは、フォロワーはマスタートレーダーが作成した取引ボットのパラメータをコピーすることができます。デフォルトでは、マスタートレーダーが作成した既存のボットはフォロワーにコピーされます。ただし、以下の理由により既存のボットがコピーされない場合があります。
-
マスタートレーダーが最初にボットを作成した後、市場の状況が大きく変化し、コピーが適切でなくなった場合、それらのボットはコピーされません。例えば、コピーされた取引ボットによって作成されたフォロワーのポジションの参入価格が、マスタートレーダーのものよりも悪くなる場合、マスタートレーダーの取引ボットはコピーに適さないと判断されます。
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フォロワーがボットをコピーする資金が不足している場合。
ボットの停止理由は、ユーザーセンター → ボット → 停止済みボットをご参照ください。
まとめ
フォロワーとマスタートレーダーのポジション不一致を引き起こす各種シナリオを理解することは、明確なコピートレード体験の成功に欠かせません。市場の変動や執行における制限のために軽微な乖離が発生することは自然なことですが、Bybitはシームレスなコピートレード実現のために、不一致を最小化するよう努めています。
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