リスク制限の概要
ダイナミックレバレッジの考え方は、Bybitのリスク制限システムにおいて非常に重要な役割を果たしています。ダイナミックレバレッジでは、トレーダーの契約価額が大きくなるほど、最大許容レバレッジが減少します。端的に言えば、契約価額が特定のレベルに上昇するにつれて、必要証拠金も一定の比率で段階的に増加します。各通貨ペアには、維持証拠金に関して独自の基準率があり、証拠金要件はリスク制限の変化に応じて変わります。
リスク制限は重要なリスク管理ツールであり、トレーダーのリスクエクスポージャーの制御を目的としています。ボラティリティの激しい市場では、高いレバレッジのかかった大口ポジションが強制決済されれば、多額の契約損失が発生する可能性があります。契約損失は、ポジションが破産価格を下回って強制決済される際に発生します。保険ファンドでこのような損失を完全にカバーできない場合、自動デレバレッジ(ADL)システムのトリガーが作動します。高レバレッジの大口ポジションがあると、取引所の他のトレーダーにとってADLのリスクが高まります。ADLのトリガーが作動するリスクを軽減するため、Bybitではすべての取引アカウントに対して、契約総額に基づいたリスク制限を課しています。
ポジション価額が増加すると、システムがポジション価額とアクティブ注文価額の両方に基づいて自動的にお客様のリスク制限を調整します。したがって、維持証拠金と必要証拠金の要件もそれに応じて変化します。お客様がアクティブ注文またはポジションを保有していない場合、リスク制限はデフォルトで最も低いレベルに設定されます。
リスク制限を高く設定しているトレーダーについては、強制決済が発生した場合、段階的な強制決済プロセスが適用されます。このプロセスでは、自動的に維持証拠金レベルを引き下げ、リスク制限レベルが可能な限り低くなるようにしています。この手法の採用により、トレーダーのポジションが即時にすべて強制決済される事態を回避できます。
強制決済プロセスの詳細については、以下のガイドをご参照ください。
- 標準アカウント:デリバティブ取引の強制決済プロセス(標準アカウント)
- 統合取引アカウント:強制決済プロセス(統合取引アカウント)
リスク制限情報の確認方法
すべての通貨ペアのリスク制限情報を見るには、「デリバティブ取引情報」→「デリバティブ取引ルール」→「証拠金データ」とクリックします。または、こちらのページに直接アクセスしてください。
ご希望の通貨ペアを選択すると、リスク制限情報をすべて確認できます。
リスク制限情報は、分離マージンモードとクロスマージンモードのみが対象ですので、ご注意ください。統合取引アカウントのポートフォリオマージンについては、リスク制限の調整や閲覧はできません。統合取引アカウントでは、ポートフォリオ全体に対してポートフォリオマージンのリスクが計算されます。
リスク制限の自動調整のしくみ
選択したレバレッジによって、発注できる最大許容ポジション価額が決定されます。リスク制限階層の自動調整がお客様のレバレッジを直接変更することはありません。代わりに、許容される最大ポジション価額の範囲内で、リスク制限レベルをダイナミックに引き上げたり引き下げたりします。この調整は、未決済のアクティブ注文およびポジションのそれぞれに基づいて行われ、アカウントの安全性を維持しながら、お客様のポジションを常に最適なリスク制限レベルに一致させます。
例
田中さんは、BTCUSDT契約のレバレッジを90倍に設定しています。リスク制限の階層表によると、90倍のレバレッジの最大許容ポジション価額は260万USDTです。
現在、田中さんはBTCUSDT契約に100万USDT相当のロングポジションを保有しているとします。ここで田中さんがBTCUSDT契約で100万USDTのロング注文を追加で発注すると、リスク制限階層は第1階層から第2階層に変更されます。
しかし田中さんがBTCUSDT契約で再度100万USDTのロング注文を発注しようとすると、システムは注文をブロックします。なぜなら、ポジションおよびアクティブ注文の合計価額が300万USDTとなり、90倍のレバレッジの最大許容ポジション価額である260万USDTを超えるためです。田中さんが260万USDTを超えるポジションを建てたい場合、手動でレバレッジを最大80倍まで引き下げる必要があります。この調整により、最大許容ポジション価額は320万USDTに引き上げられます。
ワンウェイポジションモードの場合:
実効ポジション価額 = Max (ロングのオープンポジション価額 + ロングのオープン注文価額, ショートのオープンポジション価額 + ショートのオープン注文価額)
注:オープン注文とは、約定時に、現在のオープンポジション価額を増加させる、または既存のポジションを現在の方向で決済すると同時に逆方向の新規ポジションを建てる注文を指します。
例
- 田中さんがBTCUSDT契約で1,000ドル相当のロングポジションを保有し、同時にBTCUSDT契約で2,000ドル相当のロング注文を保有する場合、リスク制限値はMax (1,000 + 2,000, 0) = 3,000ドルと計算されます。
- 田中さんがBTCUSDT契約で1,000ドル相当のロングポジション、ならびにBTCUSDT契約で2,000ドル相当のロング注文および8,000ドル相当のショート注文を保有する場合、ロングポジションを決済した後のショートポジションは8,000ドル - 1,000ドル = 7,000ドルになります。リスク制限値はMax (1,000 + 2,000, 0 + 7,000) = 7,000ドルと計算されます。
ヘッジ(ツーウェイ)ポジションモードの場合:
実効ポジション価額 = Max (ロングのオープンポジション価額 + ロングのオープン注文価額, ショートのオープンポジション価額 + ショートのオープン注文価額)
例
- 田中さんがBTCUSDT契約で1,000ドル相当のロングポジションを保有し、同時にBTCUSDT契約で2,000ドル相当のロングのオープン注文、500ドル相当のロングのクローズ注文を保有する場合、リスク制限値はMax (1,000 + 2,000, 0) = 3,000ドルと計算されます。
- 田中さんがBTCUSDT契約で1,000ドル相当のロングポジションおよびBTCUSDT契約で1,000ドル相当のショートポジションを保有し、同時にBTCUSDT契約で2,000ドル相当のロングオープン注文、500ドル相当のロングのクローズ注文、5,000ドル相当のショートのオープン注文を保有する場合、リスク制限値はMax (1,000 + 2,000, 1,000 + 5,000) = 6,000ドルと計算されます。
リスクパラメータ調整に関するプラットフォームルール
Bybitは市場流動性を定期的に評価しています。市況が大きく変化した場合、リスク制限に調整が加えられることがあります。その際には、以下のリスクパラメータに影響が及びます。
- 必要証拠金率(IMR)
- 維持証拠金率(MMR)
- 最大許容レバレッジ
- ポジション制限
新たなリスクパラメータへの調整を実施する場合、Bybitはお知らせを通じてお客様に事前通知します。また、ポジションを保有しているお客様には、メールでご連絡します。調整中に、システムはお客様のアカウントリスクを試算します。調整後のリスクが低いと判断された場合、システムはお客様のアカウントに対して新たな調整を実施します。結果として、ポジションの証拠金要件が変更される可能性があります。
調整後のリスクが高くなるとシステムが判断した場合でも、新たなリスクパラメータが直ちにアカウントに適用されることはありません。この場合、10日間のバッファー期間が提供され、その間は、リデュースオンリー注文を出すか、問題の特定の通貨ペアの注文をキャンセルすることしかできません。新しいリスク制限レベルに対応するためにアカウントまたはポジションに証拠金を追加するまでは、ポジションサイズの拡大につながる新規の成行注文や指値注文を出すことはできません(条件付き注文は影響を受けません)。既存注文はすべて維持されます。
10日間のバッファー期間が終了すると、システムによって新たなリスクパラメータがその通貨ペアに対して自動的に適用され、再度ポジションを建てられるようになります。ただし、調整後、ポジションが強制決済リスクにさらされる可能性があることにご注意ください。したがって、ポジションまたはアカウントリスクを管理するため、10日間のバッファー期間中に、新たなリスクパラメータにあわせて追加資金の振替を行い、潜在的な強制決済リスクを軽減することをお勧めします。
すでに上記の対策をとっている場合は、制限を解除するため、「Lift Restriction(制限を解除する)」をクリックしてください。
注:
— お客様のリスクパラメータに調整が加えられると、取引ツールを利用して実行される取引戦略に影響が及ぶ可能性があります(取引ボット、TWAP、Webhookシグナル取引など)。証拠金が不足している場合、新規注文を出せません。デリバティブアカウントや統合取引アカウントに資金を入金するか、振替を行なってください。または、戦略のリセットをご検討ください。
— ポジションまたはアクティブ注文がない場合、既存のレバレッジが新たに調整された最大許容レバレッジよりも高い場合、発注を制限するエラーメッセージが表示されることがあります。手動でレバレッジを調整し、調整後の最大許容レバレッジに合わせてください。
— 10日間のバッファー期間中:
- TWAP、追跡注文、Webhook、アイスバーグ注文などの実行中のストラテジーは終了せず、リデュースオンリー注文のみが発注されます。新規注文は、10日間のバッファー期間が終了するまで拒否されます。
- 取引ボットが保有する既存の無期限ポジションは決済されず、新規注文は発注されません。ボットは終了しません。10日間のバッファー期間中に手動でボットを終了させるか、10日間のバッファー期間が終了したら、新しいリスクパラメータに合わせてボットに投資額を追加することをお勧めします。
— リスクパラメータ調整後のアカウントリスクが低下しているかどうかの判断基準は、以下のとおりです。
- 標準アカウント:
ロングポジション:(新たなリスク制限ルールに基づくポジション強制決済価格 × 0.75 + 0.25 × 平均参入価格) < 現在のマーク価格
ショートポジション:(新たなリスク制限ルールに基づくポジション強制決済価格 × 0.75 + 0.25 × 平均参入価格) > 現在のマーク価格
- 統合取引アカウント:
新たなリスク制限に基づくアカウント維持証拠金率 < 75%